2017年8月9日水曜日

死を受容する人の5つのプロセス。

entry#7
<サッドマネージメント塾-第7夜>

人間にとって最大の危機は自分の死であり、それを知ることは最大の悲しみだと言って間違いないでしょう。
本エントリーでは、自己の死について、それを受け入れるプロセスというものについて記します。

死生学(サナトロジー)で有名な精神科医キューブラー・ロス博士は、癌末期患者など何千人もの死にゆく人々にインタビューを行い、その考察を記録した著作「死ぬ瞬間~死とその過程について」において、自ら考案した死を受け入れる5段階のプロセスキューブラー=ロスモデル」を提唱しています。

1.否認・隔離:自分が死ぬということは嘘ではないのかと疑う段階。
自らの死を宣告されると、一時的なショック状態になり、やがて最初の麻痺したような感覚が薄れて落ち着きを取り戻す頃には、「自分であるはずがない」と思うようになる。直視できない悲しい事実から身を守るための、一種の自己防衛のメカニズムだといえる。

2.怒りなぜ自分が死ななければならないのかという怒りを周囲に向ける段階。
自己の死を認めたくないという否認の感情を持ち続けることができなくなると、今度は神や他の人間に対して、怒りや恨み、憤りという感情が現れる。この怒りはあらゆる方向にあたりかまわず見当違いに向けられ、周囲の者は対応に苦慮する。

3.取引:なんとか死なずにすむように取引を試みる段階。何かにすがろうという心理状態。
「避けられない結果」を先に延ばすべくなんとか交渉しようとする段階に入っていく。経験的に、善行を行えば報われるかもしれないということから、良い行いと引き換えに延命を願う。ほとんどの場合、取引相手は神であり、その内容は秘密にされる。

4.抑うつなにもできなくなる段階。
病状が進んで、もはや事実を否定できなくなる。健康を失い、経済においても財産を失い、職を失い、これから家族さえも別れなければならない現実によって、抑鬱状態に陥る。この抑鬱には、喪失した事柄に反応して起きるものと、これからさらに失っていく事柄に準備するためのものがある。喪失したものに反応しての抑鬱は、喪失感を和らげてあげることによって緩和されるが、これから失うであろうものに準備するための抑鬱は、励ましようがないし、励ましてはいけない。間違いなく愛する者を失うことは避けられないのに、哀しむなと言うことには意味がない。むしろ、哀しむことを許し、共有することによって死ぬ準備の覚悟が定まっていく。

5.受容最終的に自分が死に行くことを受け入れる段階である。
さまざまな感情を持つ段階を過ぎて、やがて最後の時が近づくのを静観するようになる。次第に長い時間眠っていたいと思うようになる。この眠りは、抑鬱や逃避のためでも、諦念や絶望による放棄のためでもなく、まさに最後の休息に近いもの。感情が欠落した状態で、周りに対する関心も薄れていく。ただ、誰かそばにいてくれて、手の一つでも握ってもらうことによって、最後までひとりぼっちではないと感じて慰められる。

以上、キューブラー・ロスの著作「死ぬ瞬間」からの要約的抜粋です。

エリザベス・キューブラー=ロス
独:Elisabeth Kübler-Ross、1926年7月8日 - 2004年8月24日
死と死ぬことについての画期的な本(『死ぬ瞬間』,1969年)の著者として知られる精神科医
著書において、彼女は初めて今日では「死の受容のプロセス」と呼ばれている「キューブラー=ロスモデル」を提唱している。まさに死の間際にある患者とのかかわりや悲哀(Grief)の考察や悲哀の仕事(Grief work)についての先駆的な業績で知られる。